背景

1994年柏まつりにおいて、青森県の柏村との縁から青森ねぶたの柏運行が実現しました。
本来単年で終了する予定でしたが、ねぶたの魅力に圧倒された市民からの強い要望で、一年空けて1996年 運行支援団体としての柏駅西口五商店会連絡会を組織し、柏まつり実行委員会の支援を受けながら柏ねぶた 囃子同好会(以降、柏ねぶた囃子会)を地元育成し、青森観光協会のご理解、青森正調囃子保存会のご協力、 第五代ねぶた名人千葉作龍氏のご尽力などを賜り1997年に再び出陣をしました。
以来、現在まで途絶えることなく様々な方々に支えられて運行を実施し、青森県外では最長のねぶた運行として 「柏ねぶた」を実施してきました。

特徴

柏ねぶたの特徴は、柏西口市街地の道路幅に合わせたW=6m.D=4m.H=3mの柏専用のねぶたで見世物としての パレード(練り歩き)と、ステージ前で観覧者も参加しての跳ね踊りであり、ねぶた祭りの原形を残しているところです。
青森本場の大型ねぶたは壮大な火祭りですが、ステージ前でどなたでも着の身着のままで跳人になれる 市民に愛される柏ねぶたを本場に負けない意気込みを持って今後も続けて行きたいと思っております。

歴代のねぶた

  • 千葉作龍:作
  • 平新皇 将門(へいしんのう まさかど)
  • 出陣年度:1994・1997~2000年
  •  西口本通り商店会にて初陣を飾った記念すべき初代ねぶた。
    坂東下総の英雄、豊田の小次郎将門をひとりねぶたで表現したものです。 雷光きらめく黒雲の中を斬り裂き、金棒を振い、天(朝廷)を睨みつける勇ましいものでした。将門の時代、実際には金棒などは振るってないのですが、朝廷のある京から見て坂東は北東の鬼門という考え方があり、将門は朝廷にとってまさに鬼神でした。 したがって画集大和桜では「鬼(将門)には金棒」というわけです。
  • 千葉作龍:作
  • 妙見尊星王(みょうけんそうんじょうおう)
  • 出陣年度:1997~2002年
  •  千葉神社の主祭神でもある妙見は、至高の武人将門を守護した神として坂東平氏である千葉氏崇敬されました。
    千葉氏の祖は将門の叔父良文で、良文が加勢しなかった戦で唯一将門は破れます。将門にとっての妙見は叔父の良文のことだったのかも知れません。
     妙見は道教に由来する北極星を神格化した信仰であり、周りに配する梵字の星々は北極星と北斗七星を表します。
  • 千葉作龍:作
  • 不動明王(ふどうみょうおう)
  • 出陣年度:1998~2001年
  •  将門ものの締めくくりは将門調伏のために開山したと言われる成田山のお不動さま。こちらも下総を代表する寺院の御本尊です。
    将門と相対するものですがどちらが正義というものではありません。 「日の本に二帝相立たず」朝廷にとっての正義を脅かす将門の相手としてはこれ以上ない好敵手と言えるのではないでしょうか?
    不動の特徴である迦楼羅炎をまとった躍動感のある不動です。
  • 千葉作龍:作
  • 討入り(うちいり)
  • 出陣年度:2001~2007年
  •  将門に代わって登場したのが忠臣蔵の大石内蔵助。
    見送りには、雪の降り敷きる本所松坂町吉良邸の表門。 山鹿流陣太鼓を打ち鳴らし今まさに討ち入る場面です。
     「歌舞伎の千葉」と異名をとる作龍先生の潤筆が生きる作品です。 ちなみに潤筆というのは「あまり筆カスレを使わない力強い書割り、明確な色使いによる色彩表現方法」で、ねぶたがまだ光の弱い蝋燭で灯されていた頃の特徴を持っています。
  • 千葉作龍:作
  • 勧進帳(かんじんちょう)
  • 出陣年度:2002~2012年
  •  不動明王に代わって登場したのが勧進帳です。
    安宅の関で富樫に嫌疑をかけられた弁慶が白紙の巻物を取り出して勧進帳をそらんじている名場面。
     当初、黒・緑・柿の三色の大きな定式幕を見送りに背負っていましたが、部分補修の際に松竹の背景に直されました。 安定感のある構図で、サイズ的にも運行・保管し易かったためか何度も修理して歴代最長の11年間運行されました。
  • 千葉作龍:作
  • 富士の誉(ふじのほまれ)
  • 出陣年度:2003~2012年
  •  妙見に代わって登場。 頼朝の富士の巻狩りに乗じ、父の仇工藤祐経を見事討ち果たし武士の本懐を遂げた曽我兄弟でしたが、賊として他の頼朝の家来たちに兄十郎は斬り殺されます。 そこに仇討ちであることを知っていた頼朝の小姓である五郎丸は、武士の情けとばかりに弟五郎の生け捕りに挑む場面。 まだ元服していない稚児髷を結っているのが五郎丸ですが、七十五人力の力持ちだったそうです。 「本懐と情け」どちらも武士の誉れというわけです。
  • 千葉作龍:作
  • 津軽為信(つがるためのぶ)
  • 出陣年度:2008~2012年
  •  討入りに代って登場。 ねぶたを国の祭りとして奨励した弘前藩の藩祖で、青森の郷土の英雄でもありねぶたの代表的な題材です。
     陣羽織に描かれた薄墨の龍は襖絵のようで美しく、弘前城を思わせる桜に「花は桜木、人は武士…」と一休宗純の詩を想い起こさせます。
     軍配の「不制于天地人」(てんちじんにせいせられず)は、「誰にも屈せず、自分の信念を貫き通す」という意味で為信の人生観です。
  • 千葉作龍:作
  • 二代目 富士の誉(ふじのほまれ)
  • 出陣年度:2013~2014年
  •  全面改修により作り直しをしています。 二代目と表現しましたのは同じ構図でも面が異なれば違うねぶただからです。
     ちなみにねぶたを作るには紙貼りや色着けの際にたくさんの方々が手伝いますが、「面書き」だけは必ず作者が行います。
     曽我五郎も細面となり、見送りの富士も赤富士に代わっています。 なお、刀を振り上げているこの構図は支えがひとつしかなく製作には非常に難しい構図です。
  • 千葉作龍:作
  • 二代目 津軽為信(つかるためのぶ)
  • 出陣年度:2013~2016年
  •  こちらも全面改修により作り直しをしています。 見送りの纏や矢盾、兜、軍配、鎧もよく見るとみな異なります。 また使用している和紙や塗料を繰り返して使う柏用に変更しています。 染料の方が和紙に馴染んだ色を出しますが、雨に弱く、耐光性がないため何年も使う柏には顔料が使われています。 近年青森でも顔料が多く使われていますが、煌々と電気をつけたイルミネーションのようなものが多く、本来の柔らかい光を出せていないため電球に工夫をしています。
  • 千葉作龍:作
  • 降魔調伏 安倍晴明(こうまちょうぶく あべのせいめい )
  • 出陣年度:2013年~2018年
  •  勧進帳に代って登場。 都市を守る四神を伴い、東日本大震災で被害にあった柏の街の祓い清めることを願って題材を選ばれたそうです。
     ちなみに千葉先生の雅号「作龍」は、初大賞(現ねぶた大賞)を獲った際、今までにない見事な龍を披露し、現在のねぶたの龍の手本となりました。 名付け親の方が師匠作太郎先生の作とその龍を合わせて名付けて頂いたそうです。 龍づくり名人の龍が柏に初お目見えしました。
  • 拾壱
  • 千葉作龍:作
  • 天慶の新皇 平将門(てんけいのしんのう たいらのまさかど)
  • 出陣年度:2015年~
  •  二代目富士の誉に代って登場。 柏ねぶた20回目の出陣を祝い、初代将門・二代目妙見を組み合わせたねぶたです。天に抗う将門を妙見が守護しています。 見送りには七人の影武者を描き、北辰と北斗七星の関係を表しています。 柏では、すでに青森で発表されたねぶたを柏に運び、ねぶた師不在でも組立できる構図に直して製作されることが多いですが、こちらの作品は初めて青森に先んじて発表された記念すべき作品です。
  • 拾弐
  • 千葉作龍:作
  • 香取の神・経津主命(かとりのかみふつぬしのみこと)
  • 鹿島の神・武甕雷命(かしまのかみたけみかづちのみこと)
  • 出陣年度:2017年~
  •  為信に代って登場。 柏西口の鎮守であります香取神を題材に製作されました。 権威を象徴する刀神フツヌシと力を象徴する武神タケミカヅチが太陽神アマテラスの露払いとして東国を鎮めます。 見送りは相次ぐ地震が鎮まるようにと願い要石が配してあります。 古代この下総の地域は広大な内海が広がっており、水軍を成す香取と陸の備えを成す鹿島が共に対岸で北の勢力に備えていたであろう様子が地政学的な浪漫を呼び覚まします。
  • 拾参
  • 千葉作龍:作
  • 千葉介常胤・源頼朝(ちばのすけつねたね・みなもとのよりとも)
  • 富士川の勝鬨(ふじがわのかいちどき)
  • 出陣年度:2019年~
  •  郷土の英雄、平千葉介常胤。 反平氏勢力を束ね富士川で平維盛軍を破った頼朝は、その勢いに乗じ、一気に京へ一番乗りを目論見ます。 しかしそれを常胤らは「まずは関東の地固めを!」と諫め、関東の平氏勢力を一掃することに注力します。 そのことが結果として大政治家後白河法皇の手から実権を奪い、権威と権力の分離に成功し「幕府」という新しい政治体制を築きます。 御代替わり、新しい時代の幕開けを象徴したものです。